99.天災とおっさん―4
ユグは一縷の望みを託すように、ライファの顔を見上げた。
ライファ兄なら分かってくれる。
ライファ兄なら、ボクをここから連れ出してくれる。
そんな、ユグの必死の願いは――無残にも打ち砕かれることになる。
「どうして……正直に言わないんだ……」
「…………え?」
震える声で言ったライファに、異変の予兆を感じるユグ。
「お前が……正直に言わないから……せっかくの魔法を使うことが出来ないじゃないかッ!!」
ユグに詰め寄ったライファは、ユグの髪を掴むとそのまま石造りの壁に頭を押し付けた。
突然の暴挙に、ユグは何が起きているのか理解することが出来ない。
「えっ、どういうこと、ライファ兄……っ!?」
「お前が、禁忌の研究に繋がる重要な魔法を完成させたことは分かっていた……お前が書庫で理論を完成させたあの日、俺はお前の書き記した内容を見ていたんだ。だから、使えると思った」
ライファの話を、ユグはすぐに飲み込むことが出来ない。
「まさか、ボクが寝ていた内に――」
「俺が密かに研究していた、“魔神”の力を行使する魔法……それを実行するためには、どうしてもお前の作り上げた魔法が必要だったんだ」
まさか、ライファがそんな危険な魔法を研究していたとは。
始めて知った事実に――ユグは、やっぱりか、とほくそ笑んでいた。




