99.天災とおっさん―3
「うあああああああああああああああああああッ!! ああっ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
薄暗い独房の中で絶叫が響く。
鎖で腕を壁に繋がれたユグは、拷問官により何度も何度も鞭で打たれていた。
身を捩ると、歪に裂けた背中からは赤黒い血がだらだらと流れ落ちる。
両手、両足の爪は全て剥がされ、本当に彼が“人”であったのか、それすらも疑わしいほどの惨い姿になっていた。
「あ、ああ…………」
「いい加減、正直に言ったらどうだ? お前の目的……実験失敗の騒ぎに紛れて、王を暗殺するつもりだったんだろ?」
うなだれたユグの髪を掴んで、強引に顔をあげさせる拷問官。
が、ユグの目の焦点は既に合っておらず、心を失ったようにただ虚空を見つめていた。
「チ……こんなやつ、いくらいたぶっても吐くわけねーじゃねーか。いい加減、さっさち処刑して終わりにすりゃいいのによ」
捨てセリフを吐いて、拷問官はその場から去っていった。
その後ろ姿を見つめるユグの目に、徐々に生気の光が戻ってくる。
「そんなこと言われても……ボクはただ、世界を救おうと……」
独りごちるユグの前に、一つの足音が止まり、独房の扉を開けた。
その姿を見て、ユグはハッと息を飲む。
「ライファ兄……!?」
ユグが独房に繋がれてから、一度も姿を見せなかったライファだった。
ライファは苦虫を噛み潰したような顔で、忌々しげにユグを睨んでいる。




