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98.天才とおっさん―4

 それは、昔、昔の話。

 と言っても、ボクの感覚からすればつい最近のことだった気がするし、キミ達の感覚だと遥か古代の頃かもね。


 とりあえず、今はそんなことどうでもよくって。

 大事なのは、そこには確かに、一人の天才が居たってこと。



***



「やった……やっと、この古文書を解読出来たぞ…………っ!」


 コクア城の書物庫にて。

 その少年は天井を見上げ、大きく息をついた。


 眼鏡を取って、額に浮かんだ汗を拭う。

 コクアの気候は寒冷だというのに、少年の上気した顔は、その興奮と果たした事の大きさを物語っていた。


「これで……コクアは……イルスフィアは救われるんだ…………っ!」


 両腕を掲げ、少年は大きく伸びをする。

 古ぼけた木の椅子の背もたれがしなって、みしみしと軋む音がした。


 それから少年は、早く研究の成果を王に報告せねばと、居ても立ってもいられずに立ち上がった。

 布の鞄に手元の書類を乱雑にぶち込んで、すぐさま玉座の間へと向かおうとする。


 が、そこで窓の外の様子を見て気がついた。


「なんだ……もう、こんな時間だったのか」


 外は真っ暗で、そういえば書物庫に誰も居ないと、少年はそこでようやく周囲の様子に気が付くのだった。


「まあ、朝からずっと篭りっぱなしだったからな……少し休んでから、報告しよう」


 少年はそう独りごちると、机の上に突っ伏し、物凄い勢いで寝息を立て始めた。


 実は、少年が書物庫に来てから既に三日は経過していたのだが――安らかな寝顔の少年は、それを知る由もなかった。

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