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10.イカとおっさん―7

「な、何を」


 驚いて身を引こうとしたグルゥだが、カッツォはさらにグルゥに近付き、がっしりと肩を組んだ。

 確かにカッツォの方が年上だが、まさか四十五歳にもなってそんな慰められ方をするとは思っていなかったので、グルゥは戸惑いを隠せない。


「なぁ、グルゥさん。お前さんがその気なら、ずっとこの村にいてもいいんじゃぞ? 見たところ、お前さんは角こそ生えているものの、とても真っ直ぐで心優しい人間じゃ」


「い、いや、そんな……私は……」


「謙遜せんでええ。人間ちゅうのは、大抵目を見れば分かるんじゃ。そんな優しい人がそんな酷い目に遭い続けてきたっちゅうのは、オイラには我慢ならないことなのじゃ」


 熱く語るカッツォにつられ、グルゥの目尻にも熱いものが溢れてきた。

 グルゥはぐしゅぐしゅと腕で目元を拭うと、改めてカッツォに対して頭を下げる。


「お気持ちは嬉しいですが……私には、まだ救わねばならない者がいるのです。ここで立ち止まるわけには、いかない」


「…………そうか。そうじゃな。グルゥさんならそう言うと、思ってたで」


 グルゥから離れたカッツォは、その背中を思い切りの力で叩いた。

 グルゥはブッと口に含みかけた酒を噴き出す。


「正直に言えばな、あの子がお前さんを拾ってきたとき、何かまずいもんが流れてきたんじゃないかと思ってたんじゃ。全身傷だらけじゃし、おまけに魔人さんと来ちょる。助けた結果、ニサードの村に悪いことを運んで来るんじゃないかと心配しておったんじゃが……こりゃあ全くの杞憂じゃったな!」


「そ、そうですか……。私も、あなた方のような心優しい人間に出会えたことで、少し救われたような気がします」


「ほんで、お世辞までうまいときちょる!! ……正直なことを言えばな、あの子の婿さんにどうかと思ってたんじゃが」


 ブッ、と再び噴き出してしまうグルゥ。

 隣の部屋では、キャッという小さな叫び声が聞こえてきた。

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