表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
942/984

96.続・狼煙とおっさん―8

 寝かしつけたキットをベッドの上に乗せ、グルゥはそっと毛布をかけてやる。

 穏やかな顔で眠るキットが衰弱し始めているなんて、グルゥはまだ信じられない。


(だが……あの時)


 ユグドラシズに一矢報いるために力を発現させたキット。

 その後、血を吐き苦しそうに呻く姿は、キットの容態が深刻な状態であることを示していた。


(私は、何をしているのだ? サリエラとノニムを救う――そのためには、ユグドラシズを倒すことが必要だと思っていた。だが、もっと大事なことが、見えていなかったんじゃないか)


 そもそもグルゥに、世界を救いたいなんて大それた希望は無かったのだ。


 ただ、大事なもの、家族を守るために、ここまでがむしゃらに走ってきた。

 それが、何の因果で、世界を救うための戦いに巻き込まれてしまったのか。


「少し……疲れたな」


 キットの寝顔が見える位置に腰掛けたグルゥは、知らずのうちにそう呟いていた。


 今さら逃げ出せないことなんて分かっている。


 ノニムの体はユグドラシズに奪われたのだ。

 娘の体が世界征服のために悪用されるなんて、そんなこは絶対に認められない。


 だが、何かを守ろうとする一方で、守りたい何かが手の中から零れ落ちようとしている。


 その事実が――グルゥには耐えられない。

 キットを救う方法を探している間に、他のみんなでユグドラシズを倒しておいてくれないか。


 そんな他力本願な祈りに、縋りたくなる。

 グルゥの心もまた、極限状態にまで追い込まれていたのだ。


「親……父……」


 寝息と共にキットが呟く。

 グルゥは目を細めると、キットを守るように、そっと隣に身を横たえるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ