96.続・狼煙とおっさん―5
そして、その夜。
ジルヴァニア城は半壊しまともに利用できないため、城下町の宿を手配されたグルゥは、キットと共に久しぶりの穏やかな時間を過ごしていた。
「こうして、二人で居ると……思い出すな」
「ん? 何がだ?」
「始めて会った時のこと。それから、一緒に宿に泊まって、一緒に風呂に入ったこともあった」
ベッドに腰掛けながら、思い出話に花を咲かせるグルゥ。
キットはそんなグルゥの様子を見ながら、どこか遠い目をしていた。
「ああ、本当に……ここまで来れて、オレは楽しかったぜ」
「ここまでって、そんな言い方をするんじゃない。お前はこれから、病気を治さなきゃいけないんだぞ」
ヴラディオとの決着と共に――グルゥが知った、新たな真実。
それは、キットの体は酷く衰弱していて、これ以上激しい戦いには耐えられないということ。
知った直後こそ動転し、キットにどうして早く伝えなかったのだと激昂しかけたが、その間にミノンが入った。
『キットは、グルゥさんに心配を掛けたくなかったんです。ボクが知ってて黙っていたのがいけなかった。怒るなら、ボクを怒ってください』
出会いの時こそ幼い少年だったのに、いつの間にか、また見ない間にミノンは大きくなっていた。
少年から青年へと移り変わるミノンの成長を目の当たりにし、グルゥはそれ以上、何も言うことが出来なかった。




