96.続・狼煙とおっさん―1
「というわけで、まずはユグドラシズの目的について整理しておこうか」
テーブルを囲んだ一同による、青空の下の作戦会議は続いていた。
「確かに、ユグドラシズの目的には不明な点が多いな。どうやら、クロカミを勇者戦争の勝者にさせたいようだが、それに何の意味があるかは分からない」
グルゥが聞くと、ネアロはフフン、と気取った口調で説明を始める。
「まあ、端的に言えばだがね。要は世界征服がしたいのさ、大賢者様は」
「世界征服? ……勇者戦争の勝者には、そんなことが出来るのか?」
「いや、それはあくまで、目的達成のための手段にしか過ぎないよ。ヤツが考えているのは、“神殺し”だ」
ネアロの放った単語に、グルゥはポカンとして言葉を失った。
「“神殺し”……? そんなことをして、何になる。というか、どうやってするんだ、そんなこと」
「勇者戦争の勝者は魔神に直接会い、勝者の褒美として願いを叶えてもらうという。その時に、ユグドラシズは魔神を殺し、新たな神としてその座に付こうとしているのだろう」
まったくの想像外の話に、グルゥはテーブルに突っ伏すように頭を抱えた。
「本気で言ってるのか?」
「まあ、ヤツとは因縁浅からぬ関係でね……。やろうとしていることは、だいたい知ってたのさ。だからこそ、イルスウォードを結成し、すぐにでも対抗する力を付ける必要があった。これ以上は、話が逸れるから話さないがね」
突拍子もない話だが、ネアロは真剣な眼差しで、嘘は言ってないのだろうと思う。
それだけに、グルゥはある一点が疑問だった。




