95.狼煙とおっさん―1
「申し訳なかった!!」
半壊したジルヴァニア城に作られた仮設医務室。
その室内に、爆音に近いグルゥの渾身の謝罪が響いていた。
「お、親父、他の人に迷惑だって」
「いや、しかし……私は自身の感情に任せ、二人を殺しかけてしまったのだ」
そんなグルゥを窘めるのはキットだ。
グルゥが土下座をして全力で謝っているのは、ベッドに寝かされたマリモとカエデに対してだった。
呆気に取られているカエデに対し、マリモは苦笑気味でグルゥに言葉を返す。
「でも、グルゥさんがそうしないと……今頃は、私達もユズにやられてたんでしょう?」
「だが、それは結果論で――」
「だあああああああああああっ!! うるせえっ!!」
しつこく謝り倒すグルゥに対し、カエデの堪忍袋の緒が切れる。
「男らしくねぇっ! 結局私達が無事だったんだから、それでいいじゃんかっ! それよりも、今はユズをどう止めるかの方が問題じゃ……っててて!」
ベッドの上から啖呵を切るカエデだったが、傷に響いたのか、ぐったりとして横になった。
「とにかく、枕元でそんなぎゃーぎゃー言われてたら治るものの治んねぇよ。分かったら、さっさと作戦会議、進めてきなって」
そっぽを向くカエデに対し、グルゥはどうすればいいのか、あわあわと焦っていた。
キットはそんなグルゥの手を引くと、仮設医務室から出て行くように進める。
「ああ言ってるんだからさ。少しは、カエデの気持ちを汲んであげなって」
「で、でもキット、私は――」
「いいから! 早く行くよ!」
キットに押し切られる形で、グルゥは仮設医務室から出て行く。




