94.異世界勇者・参とおっさん―9
「大丈夫!? ミクっ!!」
「私達が来たんだ、これ以上手出しはさせないぜッ!!」
絶望したミクの前に、マリモとカエデが現れる。
それぞれ、得物を手にした二人を見て、ミクはホッと安堵のため息をついた。
「助けて……っ、シノカミが……!!」
「分かってる。あいつは俺達を裏切ったんだ」
「もう大丈夫だ、ミク。妹には、これ以上手出しはさせない」
続けて現れたのはアキトとゲンロクである。
最愛の兄の姿に、ミクの中で張り詰めていた何かが切れる。
「やれやれ。しょうがないから、ぼくも手伝ってあげるよ」
ゲームを片手に、ユズも救援に駆けつけてくれた。
六人の異世界勇者がここに揃う。
これなら負ける心配はない――ミクは喜びのあまり、涙を流して喜んだが。
「あーあー、結局ボクが君の大親友だってことには、最後まで気が付かなかったね」
それらは全て幻影――いや、幻覚だった。
恐怖と絶望に負けたミクは、自身に『幸福の薬園』を打ち込み、見えた世界に逃げ込んだのだ。
「安心してくれ、ミク」
シノカミはミクの頭を撫でるように、そっと右手を置いた。
「今、楽にしてやるから」
それはかつての仲間にかける、最後の情けだったのかもしれない。
徐々に炭化し、塵となって消えていくミク――最後に地面に転がったのは、歪な形のクリスタルだった。




