94.異世界勇者・参とおっさん―4
そうして今日も治療を続け、陽も沈みかけた頃。
「次の方、どうぞー」
ミクに呼ばれ入って来たのは、一人の白髪の少年だった。
最初はいつも通りの治療を進めようとしたミクだが――その少年の顔を覗き込んだ瞬間に、血相を変える。
「シノカミ、どうして」
シノカミは身を乗り出して、ミクの腕を掴もうとした。
が、それよりも早く、横から飛び出したケンロウがシノカミに体当たりを食らわせる。
「なんだぁ!? テメェはッ!!」
突如やって来た襲撃者にケンロウは凄むが、地面に倒れたシノカミは、不敵な笑みを浮かべていた。
「クク……もうおしまいだ。触った、確実に触ってやった」
ハッとしてケンロウが自身の左手を見ると、いつの間にか指先が、炭化したようにボロボロになり崩れ始めている。
チッ、と舌打ちをしたケンロウは、倒れたままのシノカミに殴りかかる。
「テメェも似たような能力者かよ。だったら、俺の『完全なる殺人』で――」
右手で毒を生成し、左手でその解毒薬を作り出すケンロウのチートスキル。
左手は破壊されたものの、ガキを一匹始末するくらいなら腕一本あれば十分――ケンロウはそう考えていたが。
「チートスペル“光の剣”」
テント越しに突然現れた光の剣。
それはケンロウの胸を貫き、吐き出した血が、シノカミの白髪を赤く染めた。




