93.愛娘とおっさん―6
「さて……どうやらそろそろ、時間切れのようだね」
ユズが横目で見た先には、一人の少年と、もう一人、中年の男がいた。
「首尾はどうだい? シノカミ」
「……ごめん、邪魔が入った。命を奪うまでは至らなかったよ」
少年の方はシノカミだ。
そしてもう一人、中年の男は、見覚えのある端末を操作して何かを調べている。
「『|異世界式電子式多機能式端末』によれば、あと数分でコイツらの仲間がここに集まるぞ。そうなれば、いくら俺達でも危ういはずだ」
「分かってるよ、“先生”。遊びはここまで……あまりお父さんを挑発して体を傷付けてしまえば、本末転倒だからね」
先生、と呼ばれた眼鏡の男は、かつてユズが使っていた端末を手にしていた。
いったい、誰が異世界勇者で、どんなチートスキルを使っているのか。
グルゥは混乱しながらも、三人の前に立ち塞がった。
「待て……何処へ行くつもりかは知らないが、お前達を逃がすつもりは無い」
「ふーん。じゃ、せいぜい足止めしてみれば? もっとも、そんなの、脳筋の君じゃあ無理だろうけどね」
そう言って、パチンと指を鳴らすユズ。
「チートスペル“連続発動”」
一見すれば、何の変化が起きたのか分からないチートスペルだった。
だが次の瞬間、ユズは矢継ぎ早にチートスペルを発動させる。
「“飛翔術”、全体化”」
三人の背中に白い翼が生えたかと思うと、その体がふわりと宙に浮く。
どうやらそのまま逃げるつもりのようだが、グルゥはとっさに熱射線を吐いた。




