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10.イカとおっさん―3

 お互いに、トリドリイカの墨を掛け合うグルゥとサリエラ。

 下らないじゃれ合いだったが、久しぶりに童心に返ったような気がして、グルゥにとっては久しぶりに心安らぐ時間となっていた。


「はぁ、はぁ……なかなかやりますね、おじさんも」


 全身カラフルな姿になったサリエラは、ついに体力の限界を迎え、その場にへたり込んだ。

 グルゥは最後に白い墨をお見舞いし、はっはっはと大きな声で笑い声をあげる。


「どうやら、私の勝ちのようだな」


「か、勝ち!? 別に私は、負けたつもりなどありません! むしろ面積としては私の方が多くかけています、私の勝ちではないでしょうか?」


「な、なんだと? 最後の一撃を加えたのは私の方だ、とすれば、私の勝ちではないか? 納得いかぬというのなら、もっとかけてやってもいいのだぞ!」


「い、いや、これ以上ぶっかけるのは、勘弁してくださいっ」


 そんな問答を、二人がしていた最中であった。

 バチャン、と大きな音がして、二人は思わず同時に振り返る。


 髭面の大男が、白い墨をぶっかけられているサリエラの姿を見て、ショックで新鮮なトリドリイカの入ったバケツを取り落としていた。

 わなわなと肩を震わせ、どう見ても怒っているようである。


「あ……お、お父様。ち、違うのですこれは」


 慌てふためくサリエラ。

 紺色の髪にべったりと白い墨をつけたその姿は、どう見ても倫理的にアウトである。


「グルゥさんと、ぶっかけあっただけです」


「何が違うんじゃああああああああああああああああああああああああッ!!」


 その怒りの雄叫びは、夕暮れのニサードに響き渡った。

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