93.愛娘とおっさん―3
「ユズ……お前、まさか……ッ!?」
「ユズ、じゃないでしょ。私はノニムだよ、お父さん」
その媚び諂うような笑い方は、明らかに先ほどのユズと同じ表情だった。
乗っ取られた。
その言葉がグルゥの頭の中を駆け巡り、パニックになる。
乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。乗っ取られた。
だけど――この体はノニムのものなのだ。
手を出すわけにはいかない――
「悪いお父さんには、お仕置きしなくっちゃね」
ノニムの剥き出しの“魔神の心臓”が、カッと眩い光を放つ。
無造作に放たれたノニムの蹴りにより、グルゥの巨体が一瞬で五メートル後方の壁に叩きつけられた。
「がッ…………ッ!?」
「まだまだ、お父さんは頑丈だから耐えられるよねぇ」
一瞬で距離を詰めるノニム。
その“魔神の心臓”が再び瞬いていた。
その時グルゥは確信する。
ノニム――いや、ユズは、自分よりもよほど“魔神の心臓”の使い方を熟知している。
「やめろッ」
両腕を交差させたグルゥだが、ユズは左の拳でいとも簡単にそのガードを弾き飛ばすと、グルゥの腹部に正拳を叩き込んだ。
骨が砕け内臓が押し潰されるような破壊力に、グルゥは白目を剥き、夥しい量の吐血をする。




