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92.追憶とおっさん―9

「どういう……ことだ? お前は異世界から来た、異世界勇者じゃなかったのか!?」


「そうだよ。だけど、この世界の大賢者でもある。それって、同時に成り立ってたらそんなにおかしいことかなー?」


 ユズは小首を傾げると、あどけない表情で笑ってみせた。

 全て、それが可愛いと思ってやっている、あざとい動きだ。


「だってボクって、もう何百年も生きてるからさー。向こうの世界に行って遊ぶことだってあるよ」


「な、何を…………言ってるんだ…………?」


「もっとも、異世界勇者のフリをしてたのは、確かにドッキリ大成功って感じだね。ボクがゲームマスターだって、全然バレてなかったみたいだし。マリモとカエデも、相当驚いた顔をしてたよ」


 この世界に異世界勇者を連れてきたのは――アキトを連れ、妻が殺される遠因を作っていたのは――ユズだった。


 少しずつ、常温に置いた氷が解けていくように、本当に少しずつ理解を始めたグルゥは、体が震えるほどの『憤怒』を覚え始めていた。


「マリモやカエデ……いや、それだけじゃない、アキトをこの世界に連れて来て、彼らが苦しむ姿を、仲間のフリをして裏で見ていたと……そういう、ことなのか……?」


「仲間のフリ? そんなこと、するわけないだろ? そもそもゲームマスターのボクが彼らを利することは出来ないし、向こうが勝手に仲間意識を持ってただけだよ。ボクは初めから――頂きに立つことしか考えていない」


 そう言って、ユズは仰々しく手を掲げると、指をパチンと打ち鳴らした。

 すると玉座の後ろから、一人の少女が虚ろな表情で現れた。


 その少女こそが、そう――


「ノニム……ッ!!」


 見間違えるはずがない。


 ムジカによく似た紫の瞳に、まだ小さい黒い巻き角。

 常に会いたいと願い、こうして再会できる瞬間を、夢にまで見ていた。


 だが、感動の再会を喜んでいる余裕はなく、親子の間には邪悪な笑みを浮かべる大賢者が佇んでいた。

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