2.続・孤児とおっさん―2
「さっき逃げたオレの仲間たち、きっと、戻ったら大人たちに暴力を振るわれると思うんだ」
「なに……? どういう意味だ」
聞き捨てならないと、グルゥは顔をしかめた。
「強盗に失敗して、仲間を見捨ててまで逃げたんだ。今日のノルマを達成出来なかったばかりか、自分達の居場所をチクられる可能性もある。だからきっと、お仕置きをされると思うんだ」
「そういうことは、早く言いなさい……! そんな理不尽な暴力、許すわけにはいかない!」
すっと立ち上がるグルゥ。
その姿を見上げて、キットは眩しそうに目を細める。
「おっさん……本当に、超がつくほどのお人好しなんだな。何にも得しないことに首突っ込んで、下手したら、自分の命だって危ないんだぞ?」
「危ないのは子供の命の方だ。全ての大人は、子供を守る義務があると……私はそう考えている」
それは、娘を守れなかった自らへの戒めの言葉でもあった。
だがキットは、それを聞いて非常に感動をしているようである。
「あ、そうだ。これから争いごとになる前に……さっきの、オレがやっちゃった傷を見せてくれよ」
そう言って、キットはグルゥの服を捲り上げた。
再び露わになる、グルゥの六つに割れた鋼のような腹筋。
そのヘソのよこに、縦にすっと切り傷がついていた。
「なんだ? 傷薬でも持っているのか? ただ、放っておいてもすぐに治るぞ?」
「おう、そうだ。薬を塗ってやるぜ。ほら」
おもむろに、グルゥの腹筋に顔を近づけたキットは、ピンクの舌を出してペロンと傷を舐めあげた。