91.魔獣とおっさん―8
グルゥがニフラから聞かされていた、サリエラの出自について情報。
それは、サリエラが『アスモデウス』の娘というだけでなく――その母親が、“血封門”の守り人らしいというところまで、突き止めていた。
「だが、今さらそんな女を連れて来たところで何になる……我が悲願は成就したり。この力があれば、貴様等の首を刎ねるなど造作もないことよ」
コキコキと首の骨を鳴らしながら、ヴラディオは一同を見やった。
(確かに、今のヴラディオから感じる力は今までとは比べ物にならない。私はともかく、他の仲間まで守り切れるのか……?)
キットやミノン、ルッタの増援が来たのは良いものの、それは同時に、守らなければならないものが増えたことを意味している。
内心の焦りを悟られないよう、グルゥは慎重に、少しずつ前に出て最前線に立とうとする。
だが、それよりも先に、一同の前に進み出た者がいた。
「王よ……これ以上の暴虐は、私が止めてみせます」
ブランだった。
剣を真っ直ぐに構えたブランが、ヴラディオに対峙し、睨みを利かせる。
「おい、無茶をするなっ!」
思わず止めに入ろうとしたがグルゥだが、それをミノンが抑えた。
「何を――」
「グルゥさん。今は、彼を信じてあげて」
信じろと言われても、グルゥが最後に見たブランは、精神を崩壊させ幼児退行した姿だ。
それから立ち直ったのかもしれないが、ヴラディオに勝てる未来は、少しも想像できない。
「愚鈍が……この期に及んで英雄気取りか? 貴様はもう用済みだ……ゴミカスにも劣る存在よ。いいだろう、まずは貴様から縊り殺してやろう」
ヴラディオの殺気が俄かに膨れ上がった。
まずい、とグルゥは身構えてブランの前に出ようとする。




