表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
876/984

89.王女とおっさん―9

「ああっ、いやぁっ!?」


 己が扱う氷よりも遥かに強大な炎に巻かれ、サリエラは悲鳴をあげた。

 バルコニー上のヴラディオの片眉が、ピクリと僅かに動く。


「チ……所詮は、不完全な覚醒か」


 炎の中のサリエラは、熱に抗うべく必死に氷のシールドを展開するが、それは生まれた側から溶けていった。

 やがて呼吸も出来なくなり、膝をついて崩れ落ちたサリエラ。


 そのサリエラを、グルゥは自ら炎の中に飛び込んで、救い出していく。


「あ……う…………っ」


 サリエラは体のあちこちに酷い火傷を負っており、意識も朦朧としていた。

 衣装は焼け落ち、ほぼ裸になったサリエラの華奢な体を、グルゥは必死に抱き締める。


「すまない、サリエラ……っ!! 今の私では、こうするしかなかった……!!」


 グルゥの呼びかけに、サリエラはうっすらと瞼を開け、微笑んだ。


 だが、元々過剰に魔力を消費していたのに加え、今の重傷だ。

 意識は朦朧としていて、くっついた体から伝わってくる心臓の鼓動も、弱々しいものに感じられた。


「あ、りが…………と……」


 サリエラは黒く煤けた細い腕を伸ばすと、グルゥの頬に手を当てる。


「これ、で……じ、ゆう、に…………」


「駄目だ、サリエラッ!! 私は、君の望みを叶えるために傷つけたわけじゃ、ないッ」


 グルゥの呼びかけも空しく。

 まるで糸が切れたように、グルゥの頬に添えられた腕が、力を失ってだらんと落ちていく。


 もはや、躊躇している余裕は無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ