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89.王女とおっさん―8

「サリエラ、君は――」


「殺して、お父様」


 それは決してヴラディオの耳には届かないような、小さな小さな呟きだった。

 だがその瞬間、グルゥははっきりと自覚したのだ。


 一見すると、正気を失ったような――殺戮兵器に変わってしまったような、サリエラの冷徹な表情。

 だが、その裏には確かに自我が残っていて、今もこうして、助けを求めている。


「何を躊躇する必要があったんだ、私は……っ!!」


 悔しい。

 その思いだけがグルゥを突き動かしていた。


 サリエラの本心に気が付けなかったこと。

 今も苦しんでいるサリエラを、すぐに助けられなかったこと。


 悔しい、ただただ悔しい。


「サリエラ……今、楽にしてやる……ッ!!」


 駆け出したグルゥに対して、極太の氷槌が撃ち込まれた。

 が、グルゥはただ愚直に進むのみで、その先端に拳を叩き込む。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


 右の拳の骨がぐしゃぐしゃに砕け、肉が爆ぜる感覚があった。


 それでもグルゥは引くことをしない。

 振り被った拳をただ振り抜くため――猛然と進み続ける。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 大地を揺るがすような咆哮。

 その瞬間、振り抜いた拳が炎に包まれ、氷槌のど真ん中に風穴が開く。


 放たれた炎の渦が、サリエラを包み込んでいた。

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