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89.王女とおっさん―4

「な――」


 ヴァングリフが言葉を失って硬直したのは、ただ矢の雨が打ち破られたからではない。

 事前に配置させていた、イルスウォードの兵士達。


 その全員が、一人残らず、サリエラの指先から放たれた寒波によって凍らされていたからだ。

 そしてヴァングリフ自身も、腰から下、半身を一瞬で凍らされていた。


「ふむ。やはり貴様のような大柄な『サタン』は、基礎体温が高いのだな。一撃で屠ることが出来なかったとは」


「ぐ……悪ぃ、グルゥおじさん。魔獣化して氷をぶっ壊すまで、ちっと時間がかかるかもしれねぇ」


 グルゥはよく分かっていた。


 『サタン』にとって体温とは、そのまま命に直結するもので、動くための活力である。

 これほどの冷気を浴びることは、行動不能になるには十分な要件だった。


「だが、やはり貴様には……この程度では屈しない、強力な“熱源”が搭載されているようだな」


 それはある種の羨望の眼差しだった。

 力を欲するヴラディオさえも目が眩むような、グルゥが得た熱球の力。


「今からでも遅くは無いぞ。我と手を組む気は無いか? 貴様が持つその力、是非とも我が手中に収めたい」


「私だって、好き好んでこの場に来たわけではないさ。だが、お前がこれ以上サリエラを利用し、ノニムを返さないというのなら」


 自身の体温のみで冷気を弾き返したグルゥは、凍りついた路面を二本の足で踏みしめ、溶かすと、真正面からヴラディオを睨み返した。


「お前も……この国も、破壊し尽くしてやる。今日限りで、お前の天下は終わりだ」


 啖呵を切るグルゥの目の奥には、もう抑えきれない“黒き炎”の輝きが灯っていた。

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