87/984
9.ビンタとおっさん―7
サリエラの言うとおり、ニサードが人手不足だというのは本当のようだった。
昼間だと言うのに村には人影がまばらで、子供の姿は全く見えないからだ。
「辺鄙なところだと思います?」
サリエラの問いかけに、グルゥは首を左右に振る。
「いや……素敵なところだと思うよ。『イルスフィア』には、このような広大な自然は無かったからな。大地に緑が芽吹き、豊かな海を擁しているのは、『アガスフィア』の素晴らしいところだと思う」
そう言って、グルゥは口元を綻ばせた。
厳つい顔に似合わない無邪気な笑顔を見て、サリエラは慌てて顔を背ける。
「ん? どうしたん……だ……」
言いながら、グルゥはハッと気が付いた。
今のセリフでは、自分が『イルスフィア』から来たことをバラしているようなものじゃないかと。
しまった、怖がられたか、と内心グルゥは焦ったが、よくよく考えたら今は黒角を隠す布も身に付けていない。
(もしかして、魔人と分かった上で世話をしてくれたのだろうか?)
そう思うと、少々情緒不安定なところがあるこの少女のことも、どことなく愛おしく思えてくる。
きっと異性に興味を持ち始め、その関心をうまく発散出来ていないのだろうと、グルゥは勝手に考えたが。
(さすがの私にも、その年頃の娘と接したデータは無いぞ)
逆に緊張してしまっていた。




