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88.炎と水とおっさん―6

「怖気づいたのですか? エルゼシュト」


「リーヴス、お前、まだそんなことを言って――」


 リーヴスは、エルゼシュトが持っていた自身の右手を強引に奪うと、傷口を合わせ、水で包むことによって強引に繋ぎ合わせた。


「勇敢な騎士だけが立つことを許された戦場に、臆病者は不要です……去りなさい、エルゼシュト」


 右手から生み出された回転する水の刃は、血によって真っ赤に染まっていた。


 勝ち目がないことなど十二分に承知済みだ。

 そして、手負いの自分が、この場においては足手纏いにしかならないことも。


 ならば、自分はどうするべきか――哀しいほどに合理的なリーヴスの思考が弾き出した、たった一つの答えだった。


「へぇ。嫌いじゃないぜ、そういうの」


 笑みを浮かべるヴァングリフだが、それは“破壊者”として、極めて嗜虐的な笑みである。

 このままリーヴスを残していけば、グルゥ相手とは違い、ヴァングリフは間違いなくリーヴスを“壊す”。


 苦渋の決断を強いられたエルゼシュトは――


「先陣に立ち、常に戦況を見極めるのも、五彩の騎士の役割だ」


 後ろからリーヴスを抱えて、その場から脱兎の如く逃げ出した。


「な……ッ!? エルゼシュト、貴様、こんな無様な姿を晒して――」


「分かれよ、リーヴス。炎と水の能力なんだ。お前が居なくなったら、俺は誰を相棒にすればいいんだよ」


 納得できない様子で騒ぎ立てるリーヴスにエルゼシュトは訥々と語りかけた。

 リーヴスはエルゼシュトの腕の中で、不甲斐なさからくる大粒の涙を零す。


「うるさい……いっつもいっつも、余計な一言が多いんだよ、お前は……! そんなんだから、ぼくはいつも……っ!!」


 眼鏡の奥のリーヴスの瞳は、まるで駄々っ子のように、感情を剥き出しにしてエルゼシュトを睨みつけていた。

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