表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
862/984

88.炎と水とおっさん―4

「それどころじゃないだろ、お前……っ!」


「それどころ、なんだよおぉ……ッ!! この私が、こんなヤツに、舐められたまま終わって溜まるか……ッ!!」


 その執念に、グルゥは背中が寒くなるのを感じる。


 実はリーヴスの指摘は当たっていた。

 酸素は補充できるようになったものの、槍の一撃により多くの血が流れ出している。


 それはつまり、体内を巡る酸素の量は、変わらず少ないままだということ。


 膝をついたまま、未だに立ち上がることが出来ないのはそのためである。

 もしも、このままエルゼシュトとの戦いになったら――グルゥの悪い予感は的中した。


「リーヴス、お前が、そこまで言うなら……っ!!」


 フラムリッターを構えたエルゼシュトが、一歩、また一歩と近付いてくる。

 それはそのまま、グルゥへの死刑宣告を意味していた。


(だ、駄目だ。まだ動くことは出来ないし、これ以上熱を生むことも不可能だ。このままでは……っ!)


 フラムリッターの斬撃が、自身にとって致命的な一撃になることは身を持って理解している。

 このまま、為す術もなく斬り捨てられるのかとグルゥが覚悟した――その時だった。


「その選択は、周りが見えてないんじゃないのか? 若い騎士さん達よぉ」


 その声は、グルゥのものではない。

 もう一人の、『サタン』の声だった。


「なん……だと……っ!?」


「ま、周りが見えてなくてこっちは大助かりだったけどな。大仰なスモークを焚いて、もう少し視野を広げた方が良かったんじゃねぇか?」


 大剣を携え現れたのはヴァングリフだった。

 グルゥを目が合ったヴァングリフは、どうだ、とでも言いたげにニッと笑ってみせた。


「遅すぎるぞ、王子……っ!!」


「グルゥおじさんが早すぎるんだよ。アホみたいなスピードで進軍しやがって」


 ヴァングリフの皮肉めいた言葉も、今は心地の良いものに感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ