88.炎と水とおっさん―2
「お前の水の力と、私が放つ熱のどちらが強いか……!! これで証明してみせる」
単純な力押しではあるが、力のぶつかり合いなら勝機はある――いや、むしろそれでしか勝てないと、グルゥは自覚していた。
策士であるリーヴスに対し、知恵比べをしても勝てるわけがない。
そう考えての行動だったが、
「やれやれ……本当にあなたは、思い通りすぎて面白みのない人ですね」
その声は、上方から聞こえた。
「な……ッ!?」
霧が晴れ、視界がクリアになると、グルゥは真っ先に頭上を見上げる。
そこには、何もない空間に“座り込んでいる”リーヴスの姿があった。
「これ、は……っ!?」
「既にあなたのいる空間を、水のドームによって“密閉”させて頂きました。狭い空間でそれほどの激しい燃焼を起こし続ければどうなるか……頭の悪いあなたでも、それくらいは理解できますよね?」
不敵に笑ったリーヴスの表情が、水面の揺らぎによって歪む。
リーヴスは、己の作った水のドームの頂点に位置していたのである。
「く…………!?」
ぐらり、と視界が歪んで、グルゥはその場に膝をついた。
平衡感覚がおかしい。
吐き気がする。
思考が散漫になって、考えがまとまらない――脳に酸素が行き届いていないのだと、数秒の遅れの後に気が付く。
「無防備な姿を晒して……無様ですねぇ。私がそのまま、苦しまずに逝かせてあげますよ」
水のドームの内部に、無数の突起物が生まれる。
それはグルゥを狙う水の槍だった。
一斉に放たれた刃が、グルゥを貫くべく四方八方から襲い掛かる。




