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9.ビンタとおっさん―5

「だが、それだけ時間が経ってしまったのなら、それこそ……今すぐに出発をしなければならないっ」


「だから、それが早合点だと言っているのですっ! 少し落ち着いてください!」


 起き上がろうとしたグルゥの体を、慌てて止めようとするサリエラ。

 が、グルゥも久々に体を動かしたため、動き方を忘れた体は勢いに負けバランスを崩してしまった。


「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」


 どんがらがっしゃーん、とベッドから転がり落ちる二人。


「いててて…………ん?」


 落下した床の上で、グルゥは自分の手に柔らかな感触があることに気が付く。

 それはサリエラの豊満な膨らみ――ではなく――


「ふーっ、ふーっ……」


 鼻息を荒くし、その膨らみへとグルゥの手を誘導しようとしている、サリエラの手の感触だった。

 その目は血走り、どうにかしてグルゥに胸を触らせようと画策している。


「……何をやってるんだ?」


 若干引き気味に、サリエラに冷静に問いかけるグルゥ。

 そこで興奮状態が解けたのか、我に返ったサリエラは、グルゥに組み敷かれている状態に気が付いて顔を真っ赤にした。


「ホギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


「なんで!?」


 下からの平手打ちを食らった挙句、サリエラに突き飛ばされたグルゥ。

 ベッドに頭を打って、そのまま床の上で悶絶した。


 サリエラは、半泣きになって部屋から逃げ出していく。


「え、ええ……? 今のは私が悪いのか……?」


 腑に落ちないグルゥだった。

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