XXX決戦前夜・鬼XXX―3
突然、立ちはだかった二人の少女に、ヴラディオは動揺する様子も見せない。
「見過ごしてくれる……っていうのは無さそうですよね」
その声は、ヴラディオの強面には似合わない、可愛らしい少年の声だった。
「やはり、偽者ですかっ」
構えた『魔弾の射手』の矢を引き絞るマリモ。
ヴラディオは両手を挙げ、抵抗する意思が無いことを示した。
「待って、待って。僕には君たちに害を与えるつもりはありません。ただ、ブラン様を助けに来ただけです」
「ブラン、を……? え……?」
二人が呆気に取られていると、見る見るうちにヴラディオの顔色が紫になり、顔の皮がどろどろと溶けていく。
あまりにもグロテスクな光景にマリモは悲鳴を上げそうになったが、“ヴラディオの皮”の下から現れた少年は、シッと人差し指を立てて唇に当てる仕草をした。
「驚かせてすみません。僕は『無血と絶楯の磺騎士』、リギス・プラネイル。五彩の騎士の一人です。もっとも……僕が仕えると決めているのは、ヴラディオ王ではなく、ブラン様ただ一人です。だからここまで、磺楯斧“パイルザッパー”の力を使って、単身ブラン様に会いに来ました」
紫の液体は一本の棒を形作り、やがてそれに刃が付き、一本の槍斧へと姿を変えていく。
だが、それ以上にマリモが驚いたのは、少年はどう見ても自分達より幼い、あどけない顔の子供だったことだ。
「無茶や無謀は承知の上です。ただ、どうしてももう、時間が無かったから……お願いです、僕の話を聞いてくれませんか?」
金髪の少年は、真剣な眼差しで二人を前に頭を下げた。
その真摯な態度に、マリモとカエデは困惑しつつも、それぞれ武器を下げる。
リギスの口から語られたのは、ヴラディオの陰謀、そしてユグドラシズの策略についてだった――




