XXX決戦前夜・鬼XXX―1
悪夢にうなされ、ルキは目を覚ました。
「う……妾、は……生きてるのか…………?」
全身がべっとりとした汗で濡れ、気持ち悪い。
上半身を起こしたルキは、指先が寝巻きの袖に隠れているのを見て、重いため息をつく。
「また縮んだか。……今のが、悪夢ではなく麒麟知による予知であるとは、冗談にもほどがあるな……」
ルキが見た夢――いや予知の光景は、アマツが火の海になるというもの。
それもただの火の海ではない、黒い炎の海である。
「良くないことが起こったようじゃな。世界の在り様を変えるほどの、何か、良くないことが……」
自身しか知りえない破滅の光景に、ルキは身震いしながら窓辺に寄って行った。
虚ろな目をして、満月を見上げる。
いったい、どうすればこの最悪の未来を変えることが出来るのか。
それを考えるのはルキにとって、この上なく重要な責務であり、何よりも憂鬱な仕事である。
「…………ん?」
心を癒すようにぼんやりと月を眺めていたルキだが、その視界に、人目を避けるようにこそこそと歩いている者が映った。
麒麟知の予知で見たことはない。
恐らくはアマツにとって無害な者だろうが、外部の者を迎え入れたという報告も聞いていないでいる。
「やれやれ、ろくに休む暇も与えてくれんな」
手を打ち鳴らし、使いを呼んだルキは、すぐさま侵入者を追うよう指示を出した。




