85.終・巨人とおっさん―3
それはグルゥの心の奥に取り残された、原初の破壊衝動。
決して触れてはならないと閉じ込め続けた感情が形となった、“少年グルゥ”の心の声だった。
『分かってるだろ。最後の最後は俺に頼るしかないんだって』
「……ああ、そうだな。私はそこまで期待して……単身ここまでやって来たんだ」
『あれ? 珍しく聞き分けがいいじゃん。殊勝な心がけだよ、俺自信。だけどさ、さすがに今回は手遅れなんだぁ』
少年の言葉に、グルゥは耳を疑った。
手遅れとは、どういうことなのか。
その力をあてにして、ここまでやって来たというのに。
『いやだって、既に全身グッチャグチャじゃん。もう再生することも出来ねーよ。このまま大人しく、死ぬしかないんだって』
「そう……か。それならば、私はこのまま運命を受け入れよう――」
『“俺だけ”の力なら、そうだろうな。だけどさ、もう……分かっちゃってんだろ? 俺から、お願いしてやろうか?』
少年の言葉に、グルゥは何と返せば良いか分からず、押し黙った。
(なんだ? 何を言っている?)
それはもう一人の自分。
心の中に閉じ込め続けた、幼少時代の姿のはずなのに、まるで自分には理解出来ないことを言い始めた。
「“お前”、は…………本当に、“私”なのか…………?」
暗闇の中、ぼんやりと浮かんだ少年のシルエットは、グルゥの疑念を嘲笑うかのように不気味な笑みを浮かべていた。




