9.ビンタとおっさん―3
少女は名をサリエラと言った。
紺色の長い髪を、頭の上で結わえており、民族的というか独特な髪型をしている。
「そうか……それで、年はいくつなのだ?」
「十四歳、です。それで、その……私は、あまり男の方に免疫がなくて……」
きちんと包帯で乳首を隠したグルゥの口元に、サリエラはスプーンで摩り下ろしりんごを運んでいった。
「はい、あーんしてください」
言われるがまま、りんごを口に含み、もぐもぐと食すグルゥ。
「きゃーっ! 初体験……男の方にあーんをするなんて、初体験ですっ……!」
興味があるのかないのかどっちだよ!?
サリエラの独特のテンションに翻弄され、突っ込むのにも疲れたグルゥは黙ってりんごを食べさせてもらう。
「だから、その、もう普通に動けるし、自分でも食べることが出来るからな?」
「はい、それは重々承知しているのですが……意識が朦朧としている時に食べさせてあげても、あまり張り合いがなかったもので……」
楽しんでないか!? こいつ!?
サリエラはグルゥがりんごを食べる度に、きゃっきゃとはしゃいで一喜一憂していた。
そしてひとしきり食べ終えてから、グルゥはいったい自分は何をしているのだと、自己嫌悪に陥った。




