表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
828/984

84.巨人とおっさん―9

 自分を握り潰そうとする巨人ギガースの圧倒的な握力。

 身動き一つ出来ず、呼吸をすることすら出来ず、グルゥはただ自分の体の中で肉と骨が潰されていく音を聞くことしか出来ない。


「…………ァ、ァッ…………グ…………」


 魔獣化の姿が解けていく。

 為す術もないまま、ただ無防備な姿、弱い自分の姿を晒していく。


 自身を握り潰そうとする巨人ギガースは、冷めた目でグルゥを見つめていた。


「脆い。脆過ぎる」


 そう言って、巨人ギガースは徐々に圧力を強めていく。

 その度にグルゥの全身に想像を絶する痛みが押し寄せ、グルゥは声にならない絶叫をあげ続けた。


 確かに、巨人ギガースと比べれば所詮『サタン』の頑強な肉体など紙屑のようなものなのかもしれない。

 だが、まさかここまで種としての差があるとはと――グルゥは自身の認識の甘さを痛感させられていた。


 しかし、


「お前の心のことだ」


 何かを看破したように、巨人ギガースはその言葉を付け加えた。


(私の心が……脆い…………?)


 薄れ行く意識の中、グルゥには、その言葉だけは妙にはっきりと聞こえていた。


 ここまで、娘達を守るため、一人で戦い続けてきたつもりだった。

 確かに、過ちは何度も犯したかもしれない。


 それでも、どうにかここまで来れたのは、自分が力を付けた、成長してきたからだと、最近はようやく自分に自信を持つことも出来たのだ。


 それを、脆いの一言で片付けられるなんて――


「去ね」


 グシャリと音がして、巨人ギガースの手のひらから血と肉の飛沫が飛び散った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ