84.巨人とおっさん―6
が、返って来たのは、角による乱暴な頭突きである。
「去ね。血統を穢した者との和解など、儂は決して認めんぞ」
「それらの憎しみは全て……王子の愛した、コクアの王女の病が治れば解けるのです!! だから私は、霊薬を彼らに渡そうと――」
「ならぬ、絶対にならぬッ!! これ以上下らない問答を続けるというのなら、衛兵に命じ貴様も二度とこの国に戻れないようにしてやるぞッ!!」
デルガドスの怒号が病室中の物を震わせた。
分厚い手のひらの中でミルププが暴れ何かを言っているようだが、完全に密閉されているため全く聞こえない。
グルゥは、ついに――用意してきた言葉を、口にすることにした。
「分かりました。それなら……私が、王になります」
吼え猛るデルガドスだったが、それを聞いた瞬間に、大きく息を飲み込んだ。
「……本気で、言っておるのか」
「はい。ヌエツトの王は、代々最も力の強いものがなると決まっているはずです」
「笑止千万。手負いの儂を殺し、それで国民が認めるとでも思っておるのか」
「もちろん、そんなことは露ほども思っておりません。……正式に王として認められるためには、ある“儀式”を行う必要があると。それは、王自身がよく知っていることでしょう」
グルゥの言葉に、デルガドスは大きく目を見開いた。
「まさか、お前――」
「はい。私は巨人の試練に打ち勝ち……当人から、直接霊薬を持って帰ります。それが、ヌエツトの王が強靭な肉体を得る、強さの秘密なのでしょう? そして、巨人の試練に打ち勝ったものは王家の一員になると決められている。だから私は……この地に、戻ってきたのです」
ヌエツトの王になること。
それが、グルゥが決意した、イルスフィアを統一するためのたった一つの方法だった。




