9.ビンタとおっさん―2
鼓膜をつんざくような大絶叫だった。
思わずグルゥは耳を押さえて、慌てて少女の視線の先を辿ってみる。
皿を取り落としてひっくり返し、両手で顔を覆う少女の恥じらい方からして、まさか足を広げてアレでも見せてしまったのかと――そう、焦るグルゥだったが、
「ん、むぅ。ちゃんとパンツも替えてもらってるな」
どうでもいい発見をし、何となく嬉しくなる。
とすると、少女がそこまで驚く理由が分からなかった。
あまりにも自分の顔が怖すぎたのだろうか?
少女はまだ顔を手で覆っていたが、よくよく見ると、その指の隙間からチラチラとこちらの様子を窺っているようだ。
「ち、ち、ち……」
「ち? ……まだ、出血でもしていたか? 脅えさせてしまったのなら、すまな――」
「乳首ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
少女は人差し指を突き出して、その決定的な事項を指摘する。
グルゥは唖然として、自分の胸元をよく見てみた。
どうってことはない。
至ってごく普通の乳首だ。
「え……すまん、よく分からんのだが」
「乳首が出てますっ!! ちゃんと、包帯で覆っておいたはずなのにっ!!」
まさか少女は、男の乳首一つでこれほどウブな反応をしているのだろうか。
呆気に取られるグルゥだったが、ついに少女は顔を覆ったまま、部屋から出て行ってしまった。
……ように見えたが、ドアの隙間からチョロチョロを顔を出し、グルゥの様子を覗き込んでいる。
「いや見たいのか見たくないのかどっちだよ!?」




