EX9.おっぱいとおっさん その2―1
グルゥがヌエツトに向かって出発をする、その前日である。
長い道のりになることが予想されていた。
グルゥは与えられた部屋の風呂に浸かりながら、ゆっくりと休養を取っていたのだ。
(しかし、このサイズ……うっかりハマって出られなくなってしまいそうだ)
元々『ベルゼブブ』用のサイズで作られている湯船であるため、正反対の体格である『サタン』にとって、全身を湯に浸からせるためには体を極端にくの字に曲げる必要があった。
多少の不便を感じつつも、久しぶりに休息を取れる喜びの方がグルゥには大きい。
どうにかこうにか体を沈めて、長風呂を楽しんでいた時である。
「お背中、流しに来ましたぁ」
突然、前触れもなく浴室のドアが開いて、入って来た女が一人。
「は……はあああああああああああああああああっ!?」
豊満な体に大きなタオルを巻き――いやにボディラインを強調するようなポーズでやって来たのは、ニフラだった。
「お、お、お前っ、なんでこんなところに――」
「なんでも、何も……私は、初めから王子派でしたからぁ。ずっと王子の味方をしていたんですよ?」
慌てて前を隠し湯船から出ようとするグルゥだったが、その時、悲劇が起きた。
焦りのあまり足を滑らせたグルゥ。
すると、大きな体はすっぽりと湯船の中にはまり――
「で、出れない」
しっかりと固定され、どうにも身動きが出来ない状況になってしまう。
アクシデントの発生に、ニフラはぺろんと、大きな舌で唇を舐めた。




