83.願いとおっさん―3
「だけどなぁ、ミルププ。君は、あのヌエツトの暴君が正しいと言うのかい?」
「違うょ……! おじぃちゃんは間違ってるけど、ぉ父さんのゃり方も間違ってる……!! だからゎたしは……おじ様のやり方を信じるよ……っ!!」
ミルププは、自身の小さな肩を抱くグルゥの目を、真っ直ぐに見据えながら言った。
それを見て、グルゥはハッとする。
大人の――親の勝手な都合で、ここまで振り回されてきたミルププが、自分に決断を託してくれた意味。
その重みを感じ取って、グルゥはぎゅっと目を瞑った後、一つの決断をした。
「分かった。……私が、お前らに加担するようなことは、絶対にしない」
「へぇ。この状況でそれを言うってことが、どういう意味か……それは十分理解しているんだよね?」
グルゥの両手首には、未だ“封具”が嵌められている。
その気になれば、ネアロはこの場でグルゥを殺すことも、またこの先ずっと幽閉することも可能だろう。
だが、グルゥは静かな脅しに屈することなく、きっぱりと言い切った。
「ああ。だが……“協力”ならしてやらないことはない」
「協力? ……加担はしないが協力はするとは、これはどういう謎かけだい?」
「そのままの意味だ。私がヌエツトに向かい、“巨人の霊薬”を持ち帰ってくる。そうすれば、コクアの王女……ミルププの母も救うことが出来るのだろう? それで、過去の遺恨を精算し、デルガドス王の謀殺を止めると……そう、約束してくれないか?」
グルゥの提案は、ネアロもヴァングリフも想像だにしていなかった、全く新しい選択だった。




