83.願いとおっさん―2
「ミルププ……!!」
久しぶりに見た顔、それも元気そうではあるミルププの姿を見て、グルゥは怒りを一瞬忘れて顔を綻ばせた。
だが、対照的にミルププは怒り顔まま、ずかずかとテーブルまで近付いてくる。
「お父――」
「ミルププ、無事で良かった。心配していたんだ」
ミルププは何かを言いかけたが、それよりも先に立ち上がったグルゥがミルププの肩を掴んだ。
その途端、それまでの勢いは何処へやら、ミルププの顔が真っ赤になって何も言えなくなる。
「……ぁ…………ひぅ…………」
「あれ? せっかくハキハキ喋れるようになったのに、元のミルププに戻っちまった」
キットは首を傾げてその様子を見ていたが、うるさい、とミルププは鋭くキットを睨み付けた。
ひぇ、とわざとらしく声を出して、キットは視線を逸らす。
「……ぉ、父さん…………これ、なに…………っ!」
「何って……何がだよ?」
「どう、して、ぉじ様にぃじゎるするの…………っ! そんなことするなんて、嫌い…………っ!」
ミルププの拒絶の一言に、ヴァングリフはガーンと見るからにショックを受けていた。
怒っている様子のミルププに対し、ネアロは穏やかな口調で語りかける。
「ミルププ、君は下がっていなさい。これは、君のお母さんを助けるためでもあるんだ」
「だから……ぉじ様をこっちに引き入れて、薬を取りに行かせようってぃぅんでしょ……そのために、誰かを傷つけるなんて……そんなの間違ってるょ……!!」
少しずつ調子を取り戻したのか、ミルププの声がだんだんと大きくなってきた。
それを聞いて、そういうことか、とグルゥは頷く。




