82.遺恨とおっさん―4
「儂は、この赤ん坊をヌエツトの城内に幽閉して育てようと考えておる」
デルガドスの言葉は、そんなグルゥの脳天に雷が落ちたような衝撃を与えた。
「そ、それは……王子から子供を取り上げるということですかっ!? どうして、そんな――」
「これを見よ。……決して、他言は無用だぞ」
デルガドスは、傷つけないようにゆっくりと、赤ん坊を包んでいた布を剥がしていった。
裸になった赤ん坊を見て、グルゥは衝撃を受ける。
「そ、その尻尾は――」
「ああ、そうだ。……事もあろうに、あのバカは、他の血統を交わりおった。それも、矮小な『ベルゼブブ』とよ」
赤ん坊のお尻には、黒くて細い尻尾が生えていたのだ。
グルゥは言葉を失って、目の前の光景を黙って見つめていた。
――その時だ。
「そういう、ことかよ……ッ」
バンと大きな音がして、玉座の間の扉が蹴破られる。
ハッとして振り返るグルゥ。
対照的に、デルガドスはまるで分かっていたかのように、にやりと口元を歪めた。
「王子……っ!?」
「邪魔するヤツは……全員ぶちのめしてきた……ミルププは、お前には渡さない……ッ!!」
半裸のヴァングリフが、満身創痍の状態でそこに立っていたのだ。
銀色の髪の毛は逆立ち、今にも魔獣化を果たしそうなほど、その目には『憤怒』が満ちていた。




