表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
802/984

82.遺恨とおっさん―2

 ヌエツトの城下町の、城門に近いところで。

 傘を差したグルゥは、予想通りの雨に降られながら、買い物袋を提げ歩いていた。


「…………ん? なんだ」


 城門の前を通りかかったところで、兵士と、何やら一人の若者が揉めているのに気がつく。

 慌ててグルゥが駆け寄ると、そこには思いもしなかった光景が広がっていた。


「だから……頼みますっ!! 早くしないと、この子が――」


 赤ん坊を抱えた一人の『サタン』の青年。

 少し見ないうちに大きく、逞しくなったが、何度もいじめられていたグルゥには分かる。


「王子……!! どうして、ここにっ!?」


「あ、グルゥさん。今、王子を名乗る若者が、王に会わせろとしつこく言ってきて。すぐに確認を取るから待っていてくれと、言っているのですが」


 顔見知りの門番は、困り顔でグルゥに助けを求めてくる。


 確かに、ヴァングリフは三年もの間ヌエツトを留守にしていたのだ。

 いくら面影があると言っても、分かったとすぐに城内に通すわけにはいかないだろう。


「グルゥおじさんっ! 頼むよ、俺だ、ヴァングリフだ……っ!」


「だ、大丈夫だ。私は分かっている。雨に打たれっぱなしじゃ、寒いだろう」


 グルゥは慌てて駆け寄ると、持っていた傘をヴァングリフに差し出した。

 そこで、ヴァングリフの腕に抱えられていた、布に包まれた赤ん坊と目が合った。


「お前、まさか――」


「早くしないと、この子が……この子の命が、危ないんだっ」


 この時のグルゥは、まったく気が付いていなかった。

 この赤ん坊がもたらす遺恨が、ヌエツトの将来を大きく変えようとしていることに――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ