2.続・孤児とおっさん―1
「旅人を襲って、金目のものを集めるのがオレたちの役目だったんだ。大抵の大人は、刃物でちょんと傷つければビビって何でも差し出してきた」
ようやく泣き止んだキットは、グルゥと向かい合うように原っぱにしゃがみ込んで、訥々と語りだす。
「おっさんなんてデッカイ荷物を持ってるし、見た感じ武器も持ってないし。着てるものの、この辺りじゃ見かけない雰囲気で、たぶんお金持ちだと思ったし。格好の獲物だと思ったんだよ」
穴が空いてしまったが、グルゥが着ている衣装は、確かに普通の洋服とは少し質感が違っていた。
全体的にゆったりとした布の服で、淡い灰色の色使いが、シンプルだがどことなく民族的な印象を感じさせる。
「ああ、まあ……確かに、少し変わった服を着ているかもしれないな」
どこから来たか、というところは誤魔化して、グルゥは曖昧な返答をする。
正直に話してキットを怖がらせるべきでないと、そう考えていた。
「オレたちはみんな孤児で、そういう身寄りのない子供は町の“組織”に集められ、見た目の良いヤツは客を取る仕事に就かされて、そうじゃないヤツや、男の子は、こういう盗賊紛いのことをさせられてるんだ」
「なんだ、それは……! 聞いているだけで虫唾がはしる」
グルゥは頭の両脇を押さえて、大きく深呼吸をする。
怒ってはいけない、怒ってはいけないと、自分に言い聞かせていた。
「なぁ、おっさん。一つ頼みがあるんだ。聞いてくれたら、なんでも言うことを聞いてやるからさ」
「そういう、ませたことは言わなくていい。頼みごとがあるなら素直に言ってみろ」
グルゥの言葉を聞くと、キットは嬉しそうにニカッと笑う。
まるで向日葵のような大きな笑顔に、グルゥは久しぶりに自分の心が温かくなるのを感じた。