81.交渉とおっさん―7
ネアロは肩をすくめた後、不満げに唇を尖らせながら話を続けた。
「ユグドラシズを倒す。その目的の達成のためには、どうしてもイルスフィアの意思の統一を計る必要があった。大賢者の相手が一筋縄ではいかないことは、十二分に分かっていたことだから」
「意思の統一……体の言い方をしているが、要するにイルスフィアを支配を企んでいたのだろう」
「身も蓋もない言い方をすれば、その通りだよ。いいかい? 今のイルスフィアの各国には、“血統”を重視し、他の国との協調しない独善的な風潮が蔓延っている。その旧態依然とした空気を破壊すべく結成したのが、イルスウォード。“血統”に拘らず、一つの目的のために行動しようという、全く新しい組織なのだよ」
「そのためには、犠牲が出ることや血が流れることも厭わないと……そういうことなんだな」
あくまで敵対的な姿勢を崩さないグルゥに対し、ネアロは真摯な態度で話し続ける。
「君はどうも、結果だけしか見ない癖があるようだね。確かに、そこのミノンくんを確保するよう指示を出したことはある。だがそれは、“血封門”を押さえようとするユグドラシズの動きに対抗しての行動だ。現に今、フォルのバランスを崩されたイルスフィアは、非常に不安定な状態となり、ユグドラシズの思うがままにされている」
世界の裂け目のことを思い出し、その点については、グルゥもただ頷くことしか出来なかった。




