81.交渉とおっさん―6
「まず初めに弁明させてもらうとね。私達にも、それだけの強硬手段を取る理由があったんだ」
グルゥが席に着くやいなや、ネアロの話はその第一声から始まった。
同じテーブルを囲むのは、他にキット、ミノン、ヴァングリフの三人だ。
(この男の話……真に受けて聞いていいものか)
ヴァングリフはグルゥの反対側に座り、腕を組んで、口を挟まないよう決め込んでいるようだ。
気を使っているのか、はい、とミノンがティーポットから紅茶を淹れてくれた。
「砂糖いる? 生クリームもあるよ」
「は!? ……あ、いや、特にいらん」
何故かネアロにも気を使われ、グルゥは妙な居心地の悪さを覚えた。
ミノンが淹れた紅茶には口を付けず、グルゥは黙って話の続きを促す。
「我々、イルスウォードの目的については分かってくれているかな?」
「……さぁな。イルスフィアに混乱をもたらすテロリスト集団じゃないのか」
「いやー、はっはっは、手厳しいなぁ。だけど、君の目線から見たら仕方ないのかもしれないね。私達、イルスウォードの真の目的は、ユグドラシズを倒し、このイルスフィアに恒久的な平和をもたらすことだ」
胸を張って言ったネアロの言葉を、グルゥは懐疑的な眼差しで迎え入れた。
「ふざけたことを……どうしてそれが、ミノンを誘拐したり、デルガドスを襲ったり、テンザンを破壊することに繋がる」
「まあまあ、そんな怒らないでよ。ほら、ゆっくり説明するから、まずは紅茶でも飲んで体を温めなって」
語気を荒げたグルゥに対して、ネアロはしつこく紅茶を勧めた。
だが、中に何を入れられているのかも分からない。
グルゥはその言葉を無視し、テーブルの上には何も手をつけないでおく。




