8.決着とおっさん―9
「うっ……!」
ギリギリと強く手首を掴まれ、痛みでマリモは呻いた。
アキトは、目を大きく見開いてマリモに凄んでみせる。
「黙れよッ。お前らがワガママばかり言うから、俺が率先して殺ってやってるんだろ?」
「でも、私に命じられたのは、“魔人の子供を捕まえる”ことだけ……っ! 人を殺せなんて、言われてないっ」
「仕方ねーだろ。俺の『七七七つの特殊能力』は、そうやって経験値を溜めない限り、次の“チートスペル”が解放されねーんだ。MP上限も低いままだし、な」
アキトの反論を受け、マリモはそれ以上何も言うことが出来ず、ただ押し黙っていた。
「それと、ユズはどうした? アイツにもここに来るよう言っただろ」
「興味ないって……たぶん、また宿にこもってゲームしてる」
「アイツの能力がありゃ、そもそもあのガキを取り逃がすこともなかった。だから連れて来いって言ったのに」
そう言うと、二人の視線は倒れたままのキットの方へと注がれた。
「どうするの、あの子。あの魔人さんの子供だったのかな」
「いや、違う。あの魔人のガキは結構なポイントで交換できたから、覚えてるんだ。こっちの世界で洗脳でもして、仲間に加えたんだろ。『アガスフィア』の人間なら、それこそ『アガスフィア』の然るべき機関に突き出せばいいさ」
アキトの言葉に、マリモの表情が暗くなった。
「然るべき機関って……この公国じゃ、怪しい町に連れてかれるだけじゃない」
「いや、案外『トリカゴ』送りかもしれねーぜ? 子供だとしても、男手は一人でも多く欲しいって言ってたからな」
グルゥを殺してしまったこと。
そしてキットに不幸な運命を与えてしまった罪悪感から、マリモは静かに、一筋の涙を流した。




