80.捕虜とおっさん―6
「無駄だぜ。グルゥおじさんの手足には、王が作った“封具”が付けられている」
「…………なに?」
「血統の力を抑える特殊な器具だ。おまけにこの寒冷地帯じゃ、『憤怒』の力はまともに使えねぇはずだぜ」
ヴァングリフの言葉に、グルゥは混乱した。
王、そして寒冷地帯。
自分は先程まで、テンザンに居たはずじゃなかったのか。
混乱したグルゥは、ヴァングリフに問いかけを投げようとしたが、
「がッ!?」
不意に繰り出されたヴァングリフの拳。
腹に一撃をもらい、脚の力が抜けたグルゥは鎖に体を預け前のめりの格好になった。
(打撃で、これほどのダメージを受けるとは……やはり、『サタン』の相手は、一筋縄ではいかないか)
これまで、幾多のピンチを頑強な体と圧倒的な腕力で乗り越えてきたが、今回の相手は同じ血統の『サタン』である。
それも、パワーやスピードも、自分より上回った相手だ。
「分かるか? あんたはもう、俺に屈服するしかないんだ。これ以上、痛い目に遭いたくないだろう?」
ヴァングリフの脅しに、グルゥの心は折れそうになる。
このままヴァングリフに殴られ続ければ、いずれは命を落とすことになるだろう。
それならば、さっさとヴァングリフの要求を受け入れ、言うことを聞くふりをして逃げた方が良いのかもしれない。
だが――
(私が居なければ……誰がキットやミノンを守るというんだ。ヴァングリフの思い通りにさせるわけには……!!)




