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80.捕虜とおっさん―4

 が、ヴァングリフに手を引かれて中庭に足を踏み出した瞬間、グルゥはぐにゃりと地面を踏み抜いたような奇妙な感覚を得る。


「な――」


 ぬかるみでも踏んだかと思ったが、体はそのまま沈んでいった。

 地中に潜ったグルゥに待ち受けていたのは、漆黒に染まった世界だ。


「これ、は……!?」


 真っ暗な世界で、ぴちゃ、ぴちゃと水音だけがいやにうるさく鳴り響いていた。

 何か、猛烈に嫌な予感がして、動悸が早くなっていく。


 眼前には、立ち尽くす大柄な男と、倒れ伏す少女の姿があった。


「そん、な……うそ、だ…………っ!?」


 先程までの初々しさの残る少年の姿は何処かへ消え、成長したヴァングリフが立っていた。

 筋骨隆々とした半裸の肉体には、赤い液体がべったりと付いている。


 うつ伏せに倒れたその少女の首は――何故か天を仰ぎ、ぱっくりと開いた瞳孔は何も見据えていなかった。


「キット……っ!! 何故だ、何故、こんなことを――」


「なぁ……これで……服従してくれるだろ? グルゥおじさん」


 狂気に染まったヴァングリフの眼差しが、グルゥを真っ直ぐ射抜いていた。

 グルゥは暴れ回るが、何故か両手足が闇に固定され、動くことも出来ない。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 理性を失ったグルゥの咆哮が、闇の底に吸い込まれていった。

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