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80.捕虜とおっさん―2

 一方、十三歳のヴァングリフは育ち盛りで、城内でじっとしていることなんて出来ない、力を持て余している年頃だった。


 それだけに、城内でヴァングリフとまともに付き合おうとするものは少ない。

 向こうから勝手に喧嘩を吹っかけてくる上に、相手にすればそれはそれで王子と相対することになる。


 だからこそ、ヴァングリフにとって無理難題を吹っかけても怒らないグルゥは格好の遊び相手――というよりむしろ、いじめ相手だった。


「ずーっと座りっぱなしじゃ体も鈍ってるだろ? ほら、俺が稽古をつけてやるって」


「ぎゃああああ!? いきなり関節を極めないでくださいっ! ギブ、王子ギブです!」


 腕を取られ床に強引に転がされたグルゥは、バタバタと床を叩いてタップする。


「なんだよ、ちょっとは抵抗してみせろっての。つまんねーなー」


「抵抗って……。あなたは、ヌエツトの王子なんですよ? 少しは自分の身分を弁えて――」


「王子、王子ってさ……。そんなの形だけの肩書きじゃねーか。ヌエツトの王の選び方は、グルゥおじさんだって知ってるだろ?」


 ヴァングリフに突っ込まれ、グルゥはうっと呻く。


 そう、ヌエツトの王家にとって、血筋というのはさほど重要なステータスではない。

 ヌエツトの王は、代々最も強い者が継ぐと決まっている――だからこそデルガドスも、血の繋がりに拘らず、見込みのあるものは養子に迎え入れている。


「だけど、それでも……王子というものは、国民にとっては心の拠り所になるシンボルなんです」


「あっそ。その王子も、俺以外に何人いるんだか。あのオヤジ、見境なしにガキばっか作ってるからな」


 ヴァングリフはそう言うものの、デルガドスの実子の中では最も優れた容姿を持つヴァングリフは、国民から最も愛されている王子だった。

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