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XXX悲願の成就XXX

 ジルヴァニア城の一角にて、獰猛な獣のような呻き声が響く。

 一聴すれば、それは怨嗟に満ちた男の声のように思えた。


 まさかそれが、まだ可憐な少女である王女“サリーメイア”のものであるとは、誰一人思わなかっただろう。


「ぅぅぅぅぅううううううううう…………うがああああああああああああああッ!!」


 窓一つ無い、地下の魔導実験室。

 まるで牢屋のような部屋で、サリエラは捕まっていた。


 口に猿轡を嵌められ、両手足を拘束具によってしっかりと固定されたサリエラは、狂ったように雄叫びをあげている。

 自身の体の中央から巻き起こる衝動――それを発散することすら出来ず、サリエラは悶々とした時を過ごし続けているのだ。


 そしてその様子を、部屋の片隅に張り付いた一つ目の魔物が、しっかりと監視していた――


「アハハ、自分の娘にずいぶんと酷いことをするよね、君はさぁ!」


 玉座の間の薄闇を裂くように、壁の一面に、そのサリエラの様子が映し出されていた。


「もっとも、ぼくのお手製の“封具ほうぐ”が無きゃ、彼女を抑えることも出来なかっただろうけどね」


 フードを深く被ったユグドラシズは、反応を窺うように玉座のヴラディオを見やった。

 だが、ヴラディオは玉座に片肘を付いたまま、興味なさげに明後日の方向を見ている。


「覚醒は未だ完全には至らぬ。血よりも、唾液よりも濃い血統の力……すなわち精こそが、禁忌の覚醒には必要だったのだ」


 そう言って立ち上がったヴラディオは、マントを翻して歩き出した。


「あれれ? どーしたのっ?」


「あの魔人の精……我が悲願を成就させるために、何としてでも欲しい」


 玉座の間を出て行ったヴラディオを見て、ユグドラシズはやれやれと肩をすくめるジェスチャーをする。


「まったくもう、せっかちだなぁ……。まあ、でも、親公認っていうのは、喜ぶべきことなのかな?」


 壁に映し出されたサリエラを見ながら、ユグドラシズは下卑た笑みを浮かべるのだった。

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