79.鬼とおっさん・怒―2
だがその時だ。
突然、遠方から立ち上った光の柱。
テンザンがまるで真昼間のように照らされて、ルルリリのサーチライトがそちらの方に動いた。
「今だ、マリモっ!!」
これが最後のチャンスだと言うことは、マリモもカエデも理解していた。
「『魔弾の射手』……ッ!!」
これまで幾度と無く番えてきた光の矢。
だが、今回の一撃は、今までとは比べ物にならないほど重要な一撃だと感じていた。
「『焔殺剣』乗せだ……っ! 頼む、貫いてくれよっ、マリモ……先輩っ!!」
“黒き炎”の力の応用。
カエデはマリモの放つ光の矢の先端に、“黒き炎”を灯したのである。
先程はルルリリの鋼の顎にあえなく噛み砕かれてしまったが、これならその装甲も貫けるだろうと――カエデの、一か八かの考えだった。
明らかに周囲とは違う炎の種類に、ルルリリはすぐに二人の存在に気が付いた。
『そんなところに居たんだぁ、逃げ足の速い子猫ちゃんたちッ。今すぐ、捻り潰してあげるからねぇ……ッ!』
行動を起こされる前に、マリモは引き絞った光の矢を放とうとする。
しかし、その時運悪く、額から流れてきた血がマリモの左目に入った。
「くっ……!!」
狙いがぶれる。
このまま矢を放って、ルルリリの頭を貫くことが出来るだろうか――不安が、決意を弱らせていく。




