78.鬼とおっさん・焔―8
「――なんで……どうして……っ!!」
傷だらけになった、満身創痍のカエデ。
だが、彼女の上には、それ以上にボロボロになったマリモが覆い被さっていた。
アラクネモードとなったルルリリから放たれたのは、機銃と爆撃による弾幕の嵐である。
マリモはとっさにカエデの手を引き民家の陰に隠れたが、ルルリリはそんなことお構いなしに、民家が跡形も無くなるまで弾を撃ち続けた。
降り注いだ民家の破片は、容赦なくマリモを傷つけたのだ。
「どうして、私を助けたんだよッ!! 私は、お前を殺そうとしたのに……っ」
「さ、さぁ……なんで、だろうね……」
カエデが生きていることを確認し、マリモの頬が僅かに緩んだ。
指先一本動かせないほど、全身が傷つき痛んでいる。
だが、それ程の思いをしても、カエデを守れたことには意味があるように思えた。
「昔の私だったら、こんなことしなかった、かも……。私も、変われた、のかな……」
まるで走馬灯のように、異世界に来てからの思い出が蘇る。
暴走するアキトに憤りを覚えたことや、魔獣化したグルゥを前に圧倒されたこと。
ゲンロク、そしてアキトと――共に異世界に来た友人が死んでいったこと。
様々な出来事があった。
出会いと別れを繰り返し、ここまで来れたのは決して自分の力だけではないと思う。
だがら――自分の命がカエデに繋がるのであれば、決してこの行動は無駄ではないと。
そう、素直に思えたから、マリモの口元には穏やかな笑みが浮かんでいた。
「生きて……ね……? カエデ…………」




