8.決着とおっさん―7
「……………………え?」
時間が止まったようだった。
何が起きたのか全く理解出来ないまま、グルゥは矢によって吹き飛ばされ、そのまま暗い海の中へ落ちていく。
グルゥ自身も唖然とした表情のまま、自分の身に起きた事態を把握出来ていないようだった。
ドボォン、と大きな音が鳴って、相当な質量のものが落下したことを示すように、水の柱が立ち上っていた。
「え、え、え…………え?」
カラン、と音が鳴ってダガーが石畳の上に落ちる。
やられた。
たった今、目の前で、グルゥがやられてしまったのだ。
振り返ると、荒い呼吸をしながら、マリモが光の弓矢を番えていた。
その手からはだらだらと血が流れているが、その痛みよりも、マリモは自分がしてしまったことの大きさに、驚いているようだった。
「う……うそ。威嚇射撃のつもりだったのに、どうして……っ!? 急に、出て来るから……っ!」
「ヒュー、さすがマリモ先輩。『魔弾の射手』のチートスキルは、伊達じゃないね」
茫然自失の体のマリモに対し、アキトはその活躍を労うように、わざとらしく拍手をする。
パチパチパチ、と手を叩く音が虚しく港にこだました。




