77.続・殺人鬼とおっさん―7
「大丈夫だった? カエデ」
地面に降り立ったマリモは、怪我をしたカエデの下に駆け寄っていく。
カエデは、しゃがみ込みながらもとっさに『焔殺剣』を構えて、マリモを近寄らせようとしなかった。
マリモはそんなカエデの姿を見ても、表情を変えずに立ち尽くすだけだ。
「……いいよ、それでも。でも、もう私は、人の顔色を窺って生きるのをやめたから」
「何があったんだよ。いきなり」
「私ね、一人ぼっちになって始めて分かったの。今まで私は、誰からも好かれたいと、良い子のふりをして生きていたと思う。ちょっとずつみんなに良い顔をして、ちょっとずつワガママを言って……そういうのが、賢い生き方なんだって思ってた」
だが、異世界で全ての繋がりを断たれた時。
絶望したマリモの心を救ったのは、当然のように助けに現れたリンメイの姿だった。
「きっと、本当に人に好かれたいのなら、自分が強くならなきゃいけないんだと思う。自分自身のことを好きになって、それで初めて……他人に信頼される人間になると思うの」
「……なんだよ、それ。意味分かんない。それならどうして、マリモは私を――」
「ほーんとっ! 意味分かんないよねー」
二人の会話を遮るように、あっけらかんとした少女の声が響く。
マリモとカエデは、同時に地に伏したルルリリの姿を見た。
「これくらいのことでさァ……アタシを倒せたって思ってるワケェ? いつまで経ってもトドメを刺しに来ないからさァ……もういいよ、死んだフリも飽きちゃったしィ」
「え……うそ……!? 『魔弾の射手』は、確かに心臓を貫いたはず……っ!?」
「心臓? …………そんなくっだらねェモン、とっくの昔に捨てたっつーんだよッ!!」




