8.決着とおっさん―6
キットの行動を目の当たりして、グルゥは一瞬固まってしまう。
「キット、まさかお前――」
復讐だ。
キットは自分の復讐を、手伝うつもりなのだ。
「やめろッ!!」
それだけは駄目だ。
キットに自分の変わりに手を汚させるなんてこと、絶対にさせてはいけない。
「グるるルルルルルルッルルルルルルルルルルルルルルッ!!」
声を出せないキットは、獣のような唸り声をあげてアキトに近付いていった。
そのあまりの俊足に、両者の間の距離は見る見るうちに詰まっていく。
「やべ……っ!」
アキトは逃げ出そうとするも、ヒビでも入っているのか、肋骨に手を当て険しい表情をするだけだ。
ついにアキトに迫ったキットは、口に咥えたダガーでアキトの首を狙いにいった。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「やめてぇッ!!」
グルゥの絶叫とマリモの悲鳴、二つの叫びが交錯する。
そして、ダガーの先端がアキトの首の皮に触れた、その瞬間だ。
「馬鹿者っ!!」
アキトの体を、グルゥは後ろから突き飛ばしていた。
キットの目が驚愕で見開かれる。
どうして、復讐をする相手を助けるのか――その目は、そう訴えていた。
そしてキットの横を通り過ぎた一筋の光の矢が、グルゥのどてっ腹に風穴を開けた。




