77.続・殺人鬼とおっさん―5
四方八方から降り注ぐ蜘蛛型ゴーレム。
もはや逃げ場はどこにもない。
無数の蜘蛛に埋め尽くされる瞬間、カエデは夜を引き裂く光を見たような気がした。
「……えっ!?」
眩しさに目が眩む。
その光は、どうやら走馬灯ではなかったらしい。
まるで意思を持ったように、空中を自在に動き回り、正確無比に蜘蛛型ゴーレムを貫いていく光。
その圧倒的な力を目の当たりにして、カエデはぎりりと歯を食いしばった。
「どうして……なんでお前が、助けに来るんだよッ!! マリモッ!!」
民家の屋根の屋根の上には、光の矢を番えて立つマリモの姿があった。
マリモは複雑な表情のまま、地上のカエデを見下ろしている。
「私は、お前を殺そうとしたのに……お前に復讐をしたいと思ってるんだぞッ!!」
「……ごめんね、カエデ。私は、あなたがどうして私を恨んでいるのか、分からないの。でも、このまま対話出来ないまま別れるなんて、それは絶対嫌だったから」
グルゥを探して村を走るマリモだったが、突如として村の一角で起こった爆発を見て、慌てて引き返したのだった。
そこにグルゥが居るかもしれないと踏んだからだが――実際には、傷ついたカエデがそこにはいた。
ハヌ・トゥとの戦いで、イルスウォードの刺客が恐ろしい力を持っていることは、嫌というくらい分からされていた。
だけど、カエデがやられる瞬間を見過ごすわけにはいかない――例え、カエデに嫌われていたとしてもだ。




